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ナローデッドリフトvsワイドデッドリフト

デッドリフトは大きく分けると2つのフォームが存在します。足幅を狭くして行うナローデッドリフトと、広くして行うワイドデッドリフトです。

しばしばこの2つのフォームをめぐり論争になることがあります。今回はこの2つのフォームについて比較・解説していきます。

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基本的なデッドリフトのフォームについてはコチラの記事でおさらいできます。

デッドリフト徹底解説(随時更新)

 

2つのフォームとは(コンベンショナルとスモー)

ナロースタンスデッドリフト(コンベンショナルデッドリフト)

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名前の通りナロースタンス(狭い足幅)で行うデッドリフトです。その他にもヨーロピアンデッドリフトと呼ばれることもあります。基本的にデッドリフトというとこのナローデッドリフトを指す場合が多いです。

ワイドスタンスデッドリフト(スモーデッドリフト)

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名前の通りワイドスタンス(広い足幅)で行うデッドリフトです。力士が四股を踏むような姿勢で行うため、スモーデッドリフトと呼ばれています。

尚、爪先がプレートに付きそうになる位極端に足幅を広げたデッドリフトは台湾デッドリフトと呼ばれます。これはパワーリフティングで台湾選手がこのフォームで立て続けに好記録を連発しているためにそう呼ばれるようになりました。

なぜ論争になるのか

論争の的になるのは主に、「ワイドデッドは高重量が扱いやすいから見栄っ張りのフォームだ」「筋肉をしっかり鍛えたいならナローデッドをやるべきだ」ということです。

何かとワイドデッドは非難されることが多く、逆にナローデッドは称賛されることが多いです。

2つのフォームの比較

では実際に2つのフォームにはどのような違いがあるのでしょうか?2つのフォームを比較していきます。

足幅

名前の通り、ナローデッドリフトの方が狭く、ワイドデッドリフトの方が広いです。

バーベルの挙上距離

ナローデッドリフトの方が挙上距離が長くなります。

一方ワイドデッドリフトでは脚を横に開くため、その分身体が下に沈み込むため必然的に挙上距離が短くなります。この辺がワイドデッドの方が挙上に有利で見栄っ張りだといわれる原因かもしれません。しかし実際はそんなに単純ではありません。

股関節とバーベルの水平距離(モーメントアームの長さ)

モーメントアームとは
学生時代の物理を思い出してもらえばすぐに分かると思います。テコの作用の話です。モーメントアームとは支点と力点の水平距離の距離(長さ)のことです。

このモーメントアームの長さはデッドリフトに限らずトレーニングのフォームを考える上で非常に重要な要素となります。

モーメントアームは長くなればなる程より大きな力が必要になります。トレーニングでは各関節と負荷(バーベルやダンベルなど)の水平距離で考えます。

ちなみにモーメントアームは動作中変動していきます。

デッドリフト時のモーメントアームと要求される筋力
デッドリフトでいうと横から見たときに、支点(股関節)と力点(バーベル)の水平距離が離れるほど(モーメントアームが長くなるほど)、バーベルを挙上するのに股関節はより大きな力を発揮しなければなりません。

デッドリフトの場合、動作としては股関節を伸展していく動きになるため、股関節伸展作用のある殿筋群や腰背部の筋への負荷が増えることになります。

実際は、後方に引かれる関節は股関節だけでなく、椎間関節(背骨)も同様です。特に股関節に近い下位の椎間関節ほどモーメントアームが長くなるため、腰背部の筋、脊柱起立筋に掛かる負荷も大きくなってきます。

膝関節と肩関節は?
ちなみに膝関節や肩関節はバーベルの直上付近にくるので、モーメントアームとしてはほぼゼロになり、肩・膝周囲に要求される筋活動は股関節や椎間関節と比較し少なくなります。

ナローデッドリフトとワイドデッドリフトの比較
ナローとワイドのデッドリフトで比較すると、ナローでは股関節を後方へ引いて行うため、モーメントアームが長くなります。

一方ワイドでは脚を横に開く分、股関節が前方に出るためモーメントアームが短くなります。

つまり、ナローの方がより強い股関節と脊椎の伸展筋力が必要になるということです。股関節と腰背部の筋だけについて着目すればナローの方がきつく、ワイドの方が楽といえます。

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膝と股関節の屈曲角度

関節は曲がっている程力が出しづらいです。(※実際は関節や運動方向によります)

例えばスクワットでも、フルボトムスクワットとハーフスクワットでは全然違うのが分かると思います。膝も股関節も深く屈曲するフルボトムスクワットの方が圧倒的にきついです。

これにはいくつかの理由があり、まず一つは屈曲角度が大きくなるほどモーメントアームも長くなりやすいためです。もう一つ単純に関節がより屈曲した所から動かす方が、可動域的にも大きく動かさなければならないためです。

そしてもう一つ理由があります。
それは筋肉は伸張されたところでは筋力が発揮しづらくできているということです。例えばフルボトムスクワットだと、膝が深屈曲されているため、大腿四頭筋などがかなり伸張された状態になっています。

収縮し過ぎた状態も力が発揮しづらいですが、伸張されすぎも力が発揮しづらいのです。

これは筋線維のアクチンフィラメントとミオシンフィラメントの結合の割合と、腱が伸張されることによってⅠb抑制により筋活動が抑制されることによります。(詳しく説明すると長くなるのでまた改めて記事にします)

以上のことを踏まえてナローデッドとワイドデッドを比較します。

ナローデッドの場合、膝関節の屈曲角度は小さく、股関節の屈曲角度は大きくなります。

一方、ワイドデッドリフトの場合は、膝関節の屈曲角度が大きくなり、股関節の屈曲角度は小さくなります。

上記のことから、ナローの方は膝を伸展するのは簡単だが、股関節を伸展させるのが大変だということになります。つまり殿筋群や脊柱起立筋群などの負荷が高いということです。
そしてワイドの場合は膝を伸展させるのは大変だが股関節を伸展させるのは簡単だといえます。つまり大腿四頭筋などの負荷が高いということです。

こういった理由から、ワイドデッドは強い下肢筋力が必要とされています。

バランスの取りやすさ

これはナローの方がバランスをとりやすいです。

ナローは挙がるか挙がらないかで、あまりバランスを崩す場面はみられません。一方、ワイドではしばしば前後にバランスを崩す場面をみかけます。

基本的にバランスは支持基底面と重心の位置によって決まります。

支持基底面とは、地面に接地した部分に囲まれた面のことです。
基本的に足と足に囲まれた面と考えてよいです。(※杖などを突いている場合は、両足と杖の3点に囲まれた面になります。)

支持基底面の範囲に重心が収まっていれば安定し、支持基底面から重心が外れれば不安定になります。
前後に広いと前後のバランスはとりやすくなり、側方に広いと側方のバランスがとりやすくなります。

以上のことを踏まえてナローデッドとワイドデッドを比較します。

ナローの場合、足幅は狭く、爪先が前方に向いています。両足に囲まれた支持基底面はやや正方形に近い状態です。

一方ワイドでは、足幅は横に広く、爪先は外側を向き、かなり長めの長方形になります。

面積の比較では、ワイドの方が支持基底面が広く、安定しているように考えられるような気もしますが実はそうではありません。

デッドリフトのポイントは爪先の向き。つまり側方ではなく前後の幅になります。デッドリフトでバランスを崩しやすいのは主に前後です。

ワイドの場合、脚を横に大きく開くため、それに伴い爪先も外側を向いてきます。そうすると前後の幅が小さくなります。そうなると、前後のバランスが著しく難しくなってきます。前後に狭い支持基底面の中に重心を留めなければなりません。
高重量を扱っているときに少しでも重心がズレると一気にバランスが崩れ、立て直すには相当筋肉に負担が掛かります。

骨格による個人差

これが一番重要です。

上記までの説明で分かったかと思いますが、結局ナローもワイドもそれぞれ有利・不利があります。

一般的には「ワイドデッドリフトの方が挙上に有利で楽だ」と誤解されがちです。しかし実際にはパワーリフティングの大会をみると、不利なはずのナローデッドリフトで行っている選手が多数存在します。

彼らは、自ら望んで不利なフォームを選択しているわけではありません。ただ単純にその方がより高重量が持てるからです。ワイドでやるとナローよりも記録が落ちる人も存在するのです。

結局のところどちらのフォームが適しているかは骨格によって変わるというのが答えです。

次の動画をご覧ください


CONVENTIONAL OR SUMO DEADLIFTS: What is Best For Your Leverages?

こちらの動画では、身長と腕の長さ、脚の長さのそれぞれの比率によってナロー(コンベンショナル)とワイド(スモー)のどちらが適しているかを解説しています。

1.身長を測る

2.腕の長さを測る
肩の付け根~中指の拳(でっぱり部分)

3.足の長さを測る
床から大転子(大腿骨の上の方で外側に最も出っ張っている部分)

4.体幹の長さを計算する(身長から脚の長さを引く)

5.身長に対する腕の長さと体幹の長さの割合(%)を算出する。

6.下記の表を参考にフォームを選択する

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※しかしこの動画では身長と単純な腕と脚の長さの比較だけです。おそらく、脚の長さは大腿と下腿の比率も影響してくると考えられます。また、大腿骨の前捻角や頚体角(大腿骨の股関節付け根の部分の捻じれや角度)も脚の幅の決定や爪先の角度などのフォームに影響すると思われます。しかしそこまでとなると研究も大変でしょう。

実際にやるときは色々試してみる他ありません。

まとめ

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いかがでしたでしょうか?

このようにデッドリフトは骨格によって個人差が大きい種目です。骨格の違いとフォームの違いについてはこれはデッドリフトに限った話ではありません。

トレーニング種目によっては骨格によってあまり適さない種目さえあります。誰にでもやりにくい種目や効かせづらい種目があるはずです。この記事ではデッドリフトのフォームの違いについて比較しましたが、挙上重量に有利・不利だけではなく"どこの筋肉に負荷が掛けられるか"というのも重要なポイントです。目的に応じて使い分けていきましょう。

デッドリフトの基本的なフォームについてはコチラの記事で解説しています。

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